インコの愛と、人間の不自由さと。

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今日、バスに乗っていたら、2分に1回くらいピィーと音がする。

なんだ?と思って隣を見たら、奥様の肩にインコが。

バスの中で平然とインコを連れている奥様と、まるで家のように奥様に甘えるインコ。

二度見も三度見も散々した挙句思わず、「お利口さんですね」と、声をかける。

「そうなんです、初めのうちは怖がってたんですが、慣れてきたら普通に出てきちゃって…」

見たら、少し硬めのビニールバッグにまるで小屋の中のような環境がセットされている。

少し困った顔をしながら、しっとりとした声で彼女は続ける。

「本来はもう寝てるはずの時間。

眠くて暗がり探してるんですよね、私の服の中とか笑」

バスで放し飼いのインコ。

衝撃的な絵面にも関わらず、平然と過ごす1人と1羽。

興味深くて色々と質問をした。

昔から、犬や猫を飼っていたものの歳を重ねて世話ができなくなり、

13年程生きるインコ、残りの余生を負担なく一緒に暮らせると思って飼い始めたらしい。

「この子と出会って、暮らしが大きく変わりました。

インコも、犬や猫みたいに愛情表現して可愛いですよ、

嬉しいと近寄ってくるし、お尻振ったり。」

とはいえ、飛んでいかないのかな?

「狩猟犬の耳や尻尾を切るように、インコの羽も切りそろえて良いんですよ。

そうすれば近距離しか飛べなくなるの。

この子も、お部屋で放し飼いだけど基本歩き回ってますよ。」

本当に愛おしそうな様子で、頭を撫でてインコも嬉しそう。

すっかり大人しくなったので、私も触りたいなぁと静かに指を近づけると。

「もしかすると噛むかもしれない、初対面の人にはなかなか懐かないのよ。」

「こうしていると大人しいんだけど、やっぱり小動物。初対面の人への警戒心は強いの。」

案の定、インコは私の指にカプっときた。

「ラブバードって、別名ご存知かしら。インコは、一度愛情を持つと強い関係性を保つの。」

「最初のうちは私にもとっても臆病で、すぐ噛んだりしたんだけど。

私と、一対一の関係性ができてきた途端に、甘えん坊さんになったわ。」

「鳥の躾って、どうやるかご存知?」

鳥に躾…なんて聞いたことないけど、どうするんだろう。

「犬とか、猫って、妥協するじゃない?

ダメ!って叱ると、本人もまずったなぁって顔をして。それが、犬や猫への躾。」

「けどね、インコには叱っちゃだめで、すぐ拗ねちゃって言うこと聞かなくなるの。」

「ともかく、ともかく辛抱強く言い聞かせるの、こちらが短気になっちゃだめね。」

「鳥って、自由な羽があるじゃない。

だから、嫌なことがあったら妥協して留まる必要がない。

どこへでも好きに逃げていけば良いのよね。」

なるほど、確かに環境をすぐに変えられる鳥ならではの思考回路なのかもしれない。

鳥なんて、飼ったことないので、なるほどと感心していた矢先。

「人間も、もっと自由な存在だったら。

妥協や我慢なんて感情を抱かず、きめ細やかな愛情表現ができるのに、ね。」

インコの頭を撫でながら、しっとりと話しかける彼女。

彼女の口から出て来た予想外なつぶやきに、私はなにも返せなくて。

ちょうど停車駅に着いたので、「お先に。」と一言返してバスを降りました。

興味本位で話しかけた出会い、不意に出たその一言が私の脳裏にコツンと残りました。