不審庵から日々の生活に

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不審庵での1週間の稽古を終え、俗世界に戻ってきました。

1週間、携帯・財布を没収され、

外出禁止・時間厳守・団体行動のカリキュラムで講習を終えました。

宿泊先の妙顕寺では、朝5時半に鳴らす銅羅で起き、

1時間の勤行(御経を唱える)、朝から晩まで講義と稽古三昧。

不審庵、表千家会館、妙顕寺、の行き来の日々、

外界からの情報は断絶され、

ただひたすらに茶と自分と向き合う時間はとても豊かで、

大切な事を思い出せた気がします。


茶道を嗜んでいる人

お金と時間に余裕があり、この高尚な遊びに優越感を感じる奥様方…

今までこんなイメージがありました。

もしかしたら、家庭環境からくる印象が多かったのかもしれません。

中途半端に知っていた手前、牽制していた節があったと思います。

事実、一部の男性達の嗜みであった茶道が

武士の衰退とともに縮小していった中で、

大衆化したきっかけは明治時代の女学校教育への導入にありました。

いわば、茶道の思想や所作を女性の花嫁修行に位置付けたわけです。

そういう意味では、茶道人口の大多数を占める女性像は概ね間違っていないと思います。

今回、表千家不審庵(茶道の総本家)の宗匠方(お家元直伝の内弟子の先生方)から

直接心構えについて指導賜った中で、これまでの偏見が解かれ、

茶道の本質に少しだけ触れられた気がします。


自ら座る

結局何をしていたかというと、自分がお点前(茶道の一連の動作)をする以外、

仲間のお点前と宗匠の指導をただひたすらに畳で正座して、見ています。

私の普段のお稽古も4~5時間なので、ワンタームの時間で言えば少しの我慢ですが、

これが朝晩3日も続くと流石に膝がイカれ始めます。

最終日は私の両隣の生徒は泣いていました。

足の痛みの限界と、稽古の達成感に押されながら。

「正座」はよくできた体勢だと思います。

美しく座るには、意志が必要です。

怠慢で姿勢を崩すか、姿勢を正し痛みに耐え座り続ける意志か。

辞めるも座るも自分次第で、まさに精神力が顕になる行為です。

何を好き好んでわざわざ辛いことしに行くんだと思うかもしれませんが、

たかが正座、されど正座。

自分の精神の弱い面を自戒できたと思います。


もてなし

茶道は、要するにホームパーティです。

一杯のお茶を、お客様に最高の状態で美味しく飲んでもらうために、

最高の空間を作り込み(茶室や露地と呼ばれる庭)、

その時の季節感やホストのことを考えて道具を選び(お軸や花、その他全てのお道具)、

楽しい時間を過ごしてもらうための時間配分と事前の準備段取り、

そして美味しいお茶を点てるための手順として作法があり、

全てが美しくかつ合理的だと感じます。

茶道の所作の全ての目的は、徹底したゲストへのもてなし、ただこれだけです。

宗匠方は、若い私達が茶の湯の精神にわかりやすく触れられるよう、

たとえ稽古でも一切手を抜かず、お道具やお軸を用意して説明してくださいました。

稽古最終日は、こうした皆様の感謝がこみ上げてきて、

泣きそうになりながら稽古場の掃除をさせて頂きました。


次の世代に

この講習は40年変わることなく脈々と続く伝統的な講習です。

情報は開示されませんが、今後もこの講習が無事に続いていくように、

参加する方々のためにいくつか留意点を…

着物・いかようにしても良い稽古着と、正装があると良いか思います

着物の練習・時間がありませんので遅くとも30分で着替えができると安心です

白ソックス・お寺さんの畳は裸足で歩かないように

足袋や紐・皆似たようなアイテムには名前を記載しておいたほうが良いです

足袋カバー・屋外の移動や雨の時用に、不審庵やお寺さんを汚さないように

懐紙・たくさん使いますから多めに持参したほうが安心です

爪切り・本当に大切なお道具ですから爪も注意した方が宜しいかと思います

目覚まし時計、懐中時計・普段スマホのアラームで起き、時間を確認している方は必要です

スーツケース・畳や障子を傷めないよう扱いは注意が必要です

洗濯ネット・まとめて洗濯する場合、自分の衣類がすぐにわかります

裁縫道具・着物がほつれたり裂けたり…衣類用テープでも良いかもしれません

衣紋掛け・屋外干しで活躍します

袖止めクリップ・着物で洗い物や掃除をするときにあると安心です

筆記用具・鉛筆かシャープペンシルなど消せる文具を持っていると安心です

色紙・講習が終わる頃に、お世話になった方々のために必要だと感じると思います


最後に

妙顕寺では、食前には全て「食前要文」を唱和します。

慌ただしく生活をしていると疎かになりがちな食事。

「いただきます」ですら、ササっと終わらせている自分に気づきました。

天の三光に身を温め

地の五穀に精神(たましい)を養う

皆これ本仏の慈悲なり

たとえ一滴の水一粒(いちりゅう)の米も

功徳と辛苦によらざることなし

我等これによって心身の健康を全うし

仏祖の教法(おしえ)を守って

四恩に報謝し奉仕の浄行を達せしめ給え

感じたことひとつひとつ丁寧に、日々の暮らしに落とし込みたいと思います。