20人の男たち(11/20)宗教の壁は高いと思ったDくん-2

投稿日:

付き合い始めて1年といくばくか経った頃か。

ある日、私はお世話になっているお寺さんで飲んでいた。

(そう、寺の一室でご住職やスタッフさんと酒盛りしてたんですよ私。そういえば、他のお坊さんを交えてゴルフ合コンに誘われたことがあったけどそれはさすがに丁重にお断りした笑)

その時、彼も地元だった事もあり、途中から合流した。

そのご住職は元会社員の理系SE。

ご家庭の事情でご自身が寺を継ぐことになり、仏教系大学を卒業し直して住職として迎え入れられた。

我が家は先代の頃からそのお寺さんにお世話になっている。

彼は、元サラリーマンなだけあって俗世界にも精通し笑、説教がともかくわかりやすくて面白い。

そして声が良くてイケメンなので、我が家でも大人気だ。

私は、宗教観や日本のイデオロギーについて、酔った勢いに任せて自分の意見を素直に言い、彼は隣でその話を聞いていた。

割と深酒をした帰り際だった。

寺から伸びる道を歩く途中、彼は私に言った。

「うちは、祖母の代からX会。僕で3代目なんだよね。」

私は、この一言を聞いた瞬間を今でも覚えている。

あぁ、これまで閉じていたパンドラの箱をとうとう開けてしまった。

知りたいようで知りたくなかった事実に直面し、私はその場でうずくまって泣いた。

その後はよく覚えていない。

どうやって帰ったとか、彼に何を言ったとか、とりあえず、終わりが見えてしまったことが辛かった。


ここからは本当に申し訳ないけれど、私にとっても辛い記憶で、どんな風に過ぎていったか明確に覚えていないが、私は彼に別れようと伝えた。

彼は納得がいかなかった。

親子三代の宗派、もはや生活習慣の一部であり、他の家庭同様、家に仏壇があり、家族が亡くなればお経をあげに坊さんが来るのとなんら変わらないくらいの認識だった。

もちろん、世間が持つ偏見についてわかってはいるが、世の槍玉に上がる程、悪い存在という認識はなかった。

もちろん私も、それら団体が悪いとは思わない。

むしろ、私が知っているX会の当事者は皆、人間性ができている。

そして、私は人が人として道徳観と自律心を持って生きるためには、健全な信仰心を持つことはとても良いことだと思っている。

ただ、この問題について頭で考えて、そう結論付けたとしても、やはり自分がパートナーシップを結ぶことに抵抗があった。

私は母親に一連の話をした。

結局は、蛙の子は蛙というか、母親の意見は私の結論と全く同じだった。

他所様の信仰心にとやかく言うつもりはないが、パートナーシップや結婚となれば話は別、個人対個人ではなく、家庭や組織含めての関わりになる、考えが違う者同士が社会で共生するには最適な距離が必要ということだ。

しばらく、彼との話は平行線が続いた。

そもそも私が何に抵抗感を感じているのか彼に理解してもらえない時点で、感じ方が違うと思っていた。

ただ、彼は、自分が意思を持って所属したわけではないので、辞める選択肢もあると言ってくれた。

ある日、こんな感じで、二進も三進もいかない私の様子をみて母親はとうとう痺れを切らした。

先に書いたように、我が家の両親には絶対的な偏見がある。

母親は、私に強行体質があることを知ってか知らずか、釘を刺してきた。

「もし、駆け落ちでも妊娠でもしようもんなら、親として縁を切るから、そのつもりでいな。」

この一言は、ボディブローのように効いた。

そうか、親の偏見はここまでか…と。

結婚、離婚を経た今となっては、親の価値観に従うよりも自分の心に従うべきだと自信を持って言えるが、当時の私は、親の意向を無視する程のエネルギーは無かったし、私としても、どんなに知識を身につけ、そして本人を目の前にしても、背後にある未知の団体に対する自分の偏見に打ち勝てなかった。

私にできた事は、この話を墓場まで持っていく覚悟で、同僚や友人、知人に何を言われようと多くを語らないことだった。とてもじゃないけど、おおっぴらに話す恋バナとしては荷が重すぎた。


私はこの経験で、無知は不要な先入観、誤解、偏見を生み、それがいろんな断絶の原因になってると学んだ。

最近、ネットワークビジネスについて、業界リサーチをする機会を得たのだが、これも事実の裏付けと論理的な考察によって、善と悪の線引きや、このご時世における有用性など、偏見の払拭以外にも、有益な情報が得られた。

宗教に関してもそうだ。

日本にいると宗教論争に触れる機会が少なく、免疫がない。

海外の紛争が宗教起因なこともあり、生理的な抵抗感がある人もいると思うが、正しい知識があれば適正な対応ができる。

ただ、どんなに知識を得て頭で考えても、埋まらない溝があることも学んだ。

その溝は、無理に埋める必要はなく、相手に敬意を払い尊重し、自分と他所様は違うという前提を受け入れることが、偏見や押し付けを生まない、心地のいい関係性なのだと学んだ。

そんな彼だが、最近私の大好きな友人と結婚した。

2人の幸せは、私にとっても心底嬉しい出来事だった。

(おわり)

20人の男たち 目次はこちら