(19/20)3度目の正直でフラれたHくん -2

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日本と海外、物理的な距離はありながらも、私の中で彼の存在感は大きかった。

ずるいことに彼も、私の中に上手に居場所を作ってきた。

前回→ 19/203度目の正直でフラれたHくん -1

元来乙女座は、相手の欲しがってる事を察知して自然に差し出す事に長けている。

私の微妙な心境の変化を汲み取り、最適なタイミングで最適な気遣いや助言をしてくれた。

そして、それがどれも私のツボを押さえていて、この人には敵わない…という悔しさもありつつ、その優しさが好きだった。

とはいえずっと言われていた事、「僕は根無し草、君を幸せにすることはできないよ。」

私に優しく接しておきながら、常に軽やかにかわされてきた。

物理的な距離、彼の置かれている状況を含めて私もそれは分かっていたし、異性として以上に人として好きだったので、彼に幸せにしてもらおうなんて甚だ期待せず、人と人との関係で構わないと思っていた。


3度目の再開。

それは私が離婚してズタボロの時だった。

久しぶりに彼から連絡がきた「一時帰国する」

私は彼に会いたいと伝えたが、会ってもらえなかった。

全てを話していたわけではないが、私が結婚して離婚したことも知っていて、そんな状況で会っても良いことがないとわかっていたからだと思う。

ともかくかわされ続けた。

ある時、私が作品展のお誘いをした。

どうせ来ないだろうと思って案内をしたのだが、私がシフトを終え控室を出た時、私の目の前に現れた。

「お誘いありがとう、久しぶりだね。」

数年ぶりの彼は全く変わらない姿で目の前に立っていた。

(へぇ、こうやって現れるんだ、君はいつだってずるいね。来てくれてありがとう。)

ニタっと笑いながら彼が言った。

「とっても良い作品展、楽しく観させてもらったよ。時間があるならお茶でもしようか。」

私は彼と久しぶりにゆっくり話す事にした。

相変わらず、私の欲しがっている事を察知するのがうまかった。

私がスターバックスでいつも何を頼んでいたかしっかりと覚えていて、「これでしょ」と差し出してきた。

2人でコーヒーをすすりながら、近況報告をした。

私が彼に直接会って実感した事。

本気で人を好きになるって、理屈を超越した何かを感じることなんだと思った。

元旦那との離婚騒動で、一連何があったのか言葉にしながら、私は自分の問題点に気付き始めた。

私は元旦那に対して、もっと理屈ではない何かを持ち合わせていれば、彼の一挙一動を許すことができたのかもしれない。

仲良しのご住職に、「愛は許しである」と言われた事を思い出しながら、許しきれなかった自分の心を認識し、自戒した。

会いに来てくれた彼に感謝しながら、改めて、私の中で彼の存在が大きい事も自覚した。


数日して、連休があった。

彼は連休は出張で都内にいないと言うので、私も観光がてら遊びに行く事にした。

また難色を示されたが私は相変わらずお構いなし、新幹線のチケットを買って向かったところ、泊まる場所は用意しておくと言ってくれた。

彼の仕事の合間、終始楽しい時間だった。

彼が最初に好きだと言ってくれた時に一緒に過ごした時間が、長らく時を経た今でも変わらずそこにあった、そんな感覚だった。

上から目線で話す語り口も、皮肉を挟む口の悪さも、私に手を差し出すタイミングも、全て当時と変わらなかった。

夜、ホテルに帰り、私は歩き疲れた体をベッドに投げ出した。

ちょうど手元に何かが当たった、それを触るとポストカードだった。

「人生生きていたら色んなことがある。僕は君の幸せを願ってるよ。」

私はこのメッセージを見て、ひとしきり泣いた。

離婚の一連の辛さもさることながら、こんなにも優しくしてくれながら、やっぱり彼が一緒にいてくれるわけではないと、自分の足で歩かないといけないと、そう言われている気がした。

リビングで仕事を終えた彼が様子を見に来た。

「え…泣いてるの?」ベッドルームでシクシク泣く私の姿を見てギョッとしていた。

(おいおい、こんなことしておきながらそこでドン引きすんなよ!)と腹立たしく思いながら、ともかく全部出してしまいたくて、もう何がどうなってるかわからずともかく泣いた。

終いには満身創痍になりながら眠りについた。

彼は静かに横にいてくれた。

翌日、私は東京に戻った。

なんだかとてもスッキリとした面持ちで、もう色々と手放そうと思えた。


結局、彼に真相は聞けず仕舞いなのだが、大事にする素振りを見せながら彼から突然連絡が途絶えた。

連休で過ごした後は、彼の中でも心境の変化があったのか、海外渡航前を含め私への気持ちを素直に言葉にしてくれていたのだが、何を思ったのか、突然態度が変わった。

当時は、(この手のひら返しはなんだろうか?)と解せない気持ちで一杯だったのだが、今思えば、「男の傷は男で癒す荒療治」だったのかもしれない。

そう、期待してはいけないと、ポストカードのメッセージを読んだ時からわかっていたことだ。

女友達のHくんの評判は今も昔もすこぶる悪い。(海外渡航前からずっと笑)

「あんたの解釈は彼を美化しすぎ!」

「こっちの気持ちを利用して上から目線でムカつく!」

「やる事なす事、キザで気持ち悪い!」

「責任とらない優しさは、単なるエゴ!」

まぁ、女友達は言いたい放題言ってくれる笑

他人のことなんて全てを理解できない。

旅人のような彼は特に、心の奥底を人に晒してまで理解してもらおうなんて思っていないはず。

私の中で、彼への未練もないし、もしこの話が美化されていたとしても、私がいろんな執着を手放せた事に一役買ってくれた事に感謝している。

けれどまたいつか、皺々のじぃちゃんばぁちゃんになった頃に、この出来事を彼と振り返りたい。

(おわり)

20人の男たち(目次)