妊娠・出産-3 二重国籍とアイデンティティ

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子供が産まれた。

それも、日本とフランスを背景に持つ親から産まれた子供だ。

2,000年もの間、国家が変容したり、国土が分断されたことのない日本人にとって、日本という国は空気のように存在する。

しかし、この二重国籍を持つ子供に対峙して、私は初めて「日本人とは?」「日本国籍とは?」というような、これまで無自覚だったテーマに直面した。

ブックエデュケーションの範囲で考察をしたことはあったが、今回はよりリアルで実践的だ。

手続き上の実態も踏まえて感じた事を、徒然と書こうと思う。

(余談)

ある人に読み聞かせをしてもらった本が印象的だった。

あかちゃんって、本当にこうやって寝るんだよね。



まず驚いたことは、国際結婚の手続きだ。

日本人同士の結婚であれば、親の戸籍から離脱し、夫婦で新たな戸籍を作ることになる。

しかし、外国籍の配偶者の場合、外国籍を持つ人は日本の戸籍には名前を記載できない。

よって、親の戸籍から離脱して、自分一人の戸籍を作ることになる。

要するに、「国籍=戸籍がどこにあるか」ということであり、帰化しない限り配偶者の戸籍には名前が載せられず、「日本に戸籍がある(=日本国籍)妻と、フランスに戸籍がある(=フランス国籍)夫が結婚しました」というものが国際結婚だ。

(追記)区役所の職員と話して、必ずしも上記の限りではないとのこと。米は出生地というだけで国籍付与、どうも血統主義・出世地主義等、掘り下げれば解釈のパターンは各国それぞれある模様。あくまで日仏の話と思ってください。

そして、そこに産まれた子供はしばらくは二重国籍になるわけだが、これは「日本にある母親の戸籍にも、フランスにある父親の戸籍にも、実子として名前が記載されている」という状態を指す。

そしてその手続きは、日本の戸籍においては日本の法律に従い、フランスの戸籍においてはフランスの法律に従うという運用になっているため、日本における彼の存在とフランスにおける彼の存在は、厳密にイコールになっていない。

これ、わかるかな。

わかりやすい例を書こう。

産まれて最初にする手続きといえば、出生届、名前の申告だ。

日本に於いては親の戸籍に紐付くため、「日本国籍を持つ親の苗字に則る」ことになる。

私の場合、日本の苗字を残しているため、子供は「日本の苗字+日本の名前」になる。(滝川クリステル的な。)

一方でフランスでは、親の苗字と子供の苗字は関係がなく、かつ名前をいくつ繋げても良いらしいので、我が家では苗字を共に残し「フランス名前+フランス苗字+日本苗字」にした。(クルム伊達公子的な。)

ここで私はふと疑問に思う。

(ということは、そもそも、日本人としての名前とフランス人としての名前の2つを持つことになるのか?)

そう、結果として彼は、日本国に申告した名前が記載されたパスポートと、フランス国に申告した名前が記載されたパスポートの2つを持つことになる。

この、「公的な姓名がひとつじゃない」という概念が、ともかく衝撃的だった。

名前というものは本当に特別で、例えば漢字の意味から得る心象や、音で感じるイメージが長い時間をかけてその人の人格に作用していて、時間をかけて一体化していく。

昔、書の師である石川九楊先生に、書籍にサインをもらった時。

彼の字によって私の名前が書かれるのを見ている間、私がその文字に憑依していくような、私の一部を持っていかれるような感覚に陥ったことがある。

この時、名前が身体化している、自分の一部として一体化している体感があった。

なので、せっかくふたつの文化的背景を持った子供なので、どちらかの名前のアイデンティティが希薄になってしまわないようにしたい。

「フランスでは別の名前あるけど。別に生きてて使うことねーし、長くて不便だよ。」

とか、言われたら、名付けた父親は泣くだろう。


もうひとつ。

国籍を持つことで得られる権利だ。

彼は、仮に日本で産まれ日本語しか話せない日本人として育とうが、フランス国籍をもっていることで欧州連合の様々な権利が得られる。

身近な例でいえば、日本を出国するときは日本人として出国し、フランス(というかEU圏)に入る時はフランス人として(外国人列ではなく!)入国することになる。

(パスポートの入りと出って対にならなくて良いんだw)というのも発見だった笑

これも、「その国に産まれたことで得られる権利」を強く自覚するきっかけになった。

恐らく、この具体的な話はこれから成長するにつれどんどん体感していくことだろう

世界は、80年代から続いた新自由主義的なグローバリズムから、ナショナリズムに戻り始めている。

次のナショナリズム/グローバリズムの形が始まっていて、彼が大人になる頃にはもしかしたら欧州連合は解体しているかもしれない。

どんな世代になっていくのか楽しみでもあり、その社会基盤を作る親の責任も感じながらの産後1カ月でした。


(余談)

この文章を書きながら、小泉進次郎さんと滝川クリステルさんの結婚報道が。

まてよ、もし小泉進次郎さんが後の総理大臣になったら、滝クリはファーストレディか?

いやはや、凄いことだわ。

(おわり)